31,
2008

海外ロケーションでの撮影はスリリングで楽しいのですが、プレッシャーも多く苦痛に感じる時も多いのです。雨が降ってたりすると、不謹慎ですが、やった、今日は延期だ、と喜んだりしてます。それに比べると、撮り溜めた写真を写真集としてデザインすることほど面白いことはありません。この浜田省吾さんの「ロードアウト写真集」は1995年に出版されたのですが、撮影に9年を費やしただけに、写真集の編集には納得のいくまで時間をかけ、楽しみながらデザインしました。心がけたのは、どのページを開いても音楽が感じられるようにということでした。
出来上がったときに、ぼくにとっての究極のグラフィックとは〈自著本の編集・デザイン〉にこそあるのでは、と思うようになりました。普通は仕事が終わると、あれこれと反省点も多いのですが、この写真集は珍しく満足出来る仕事でした。実はこの写真集の写真は全て、標準レンズを付けた一台のハッセルブラッドで撮られています。9年間ずっと同じカメラで、レンズを替えることも無く撮り続けたわけです。そのいきさつは写真集のあとがきに詳しく書いていますが、一言で言うと見たままの距離感をそのまま伝えようということでした。

見開き単位のストーリー性や…

2つの写真のコントラスト性や…

透明の扉に刷られた歌詞には、様々な表情の空を合わせたり…
このように、箱入りで、布貼り仕様の豪華な写真集を、アートディレクター、写真家として、妥協をせずに出せたことは、奇跡のようなものだと思います。T2